ⓔコラム10-15-7 胚細胞性腫瘍 (germ cell tumor)

 胚細胞 (精細胞および卵細胞) を起源とする腫瘍で,胚細胞性腫瘍の大部分は性腺に発生するが,2~5%は性腺外に発生する1).その起源は胎芽発生期の尿生殖隆起に沿った胚細胞の迷入とする説が有力であり2),縦隔のほかに後腹膜や仙骨部,頭蓋内などの体正中線上に発生する.胚細胞は多分化能を有しており,胚細胞性腫瘍は多彩な組織像を呈する.

 良性胚細胞性腫瘍には成熟奇形腫と未熟奇形腫が含まれ,悪性胚細胞性腫瘍は精上皮腫 (セミノーマ) と非精上皮腫に分かれ,非精上皮腫には絨毛癌,卵黄囊腫瘍,胎児性癌が含まれており,複数の成分が混在した混合型胚細胞性腫瘍もみられる.

成熟奇形腫・未熟奇形腫

 奇形腫は3胚葉のうち2胚葉異常から由来する組織成分から構成されており,皮膚,毛髪,歯牙,脂肪,軟骨,骨,気管支,消化管などがみられる.性差はなく,青年期に多いが全年齢層で発生する.無症状で定期健診時に偶発的に発見されるほか,隣接臓器の圧迫による疼痛や,内部に含まれる膵組織からのアミラーゼなどの消化酵素による自己消化でも胸痛が出現することがある.

 胸部CTやMRIで,内部に軟部組織,脂肪,液体,石灰化を含んでいることが確認されれば奇形腫と判断できる3).また,抗NMDA受容体脳炎が縦隔奇形腫においても発症例が報告されている4).治療は外科的切除が第一で予後良好であるが,悪性転化する例もみられる5)

悪性胚細胞性腫瘍

 精上皮腫は若年男性での発症が多く,大きな分葉状の前縦隔腫瘤がみられる.化学放射線療法への感受性が高いため,化学療法が第一選択であり,画像上遺残が認められた場合は切除や放射線療法を行う.5年生存率は90%以上と予後は良好である.

 非精上皮腫も若年男性に好発するが,精上皮腫よりも進行が早く,周囲臓器への圧迫・浸潤による自覚症状を伴いやすく,診断時に遠隔転移が認められることも少なくない.80%ほどの症例で血中α–フェトプロテインやヒト絨毛性ゴナドトロピン–βサブユニット (β–human chorionic gonadotropin) が陽性であり,診断に有用である6).治療はシスプラチンを含む多剤併用化学療法が行われ,腫瘍マーカーが陰性化した後に残存病変に対し手術を行うが,5年生存率は40~60%程度と精上皮腫に比べて予後は不良である6,7)

〔谷村恵子・髙山浩一〕

■文献

  1. Collins DH, Pugh RC: Classification and frequency of testicular tumors. British Journal of Urology, 1964; 36: 1–11.

  2. Willis RA: The borderland of embryology and pathology. Bull N Y Acad Med, 1950; 26: 440–460.

  3. Moeller KH, Rosado–de–Christenson ML, et al: Mediastinal mature teratoma: imaging features. Am J Roentgenol, 1997; 169: 985–990.

  4. Stover DG, Eisenberg R, et al: Anti–N–methyl–D–aspartate receptor encephalitis in a young woman with a mature mediastinal teratoma. J Thorac Oncol, 2010; 5: 1872–1873.

  5. Morinaga S, Nomori H, et al: Welldifferentiated adenocarcinoma arising from mature cystic teratoma of the mediastinum (teratoma with malignant transformation) report of a surgical case. Am J Clin Pathol, 1994; 101: 531–534.

  6. Wright CD, Kesler KA, et al: Primary mediastinal nonseminomatous germ cell tumors. Results of a multimodality approach. J Thorac Cardiovasc Surg, 1990; 99: 210–217.

  7. Bokemeyer C, Nichols CR, et al: Extragonadal germ cell tumors of the mediastinum and retroperitoneum: results from an international analysis. J Clin Oncol, 2002; 20: 1864–1873.